週末の風景画、サッカーがある日常
http://lovetrinita.blogspot.com/2007/04/blog-post_16.html
春の陽射しの中、九州石油ドーム東口に近い駐車場に車を止める。
試合開始まではまだまだ時間があるのでドーム近くのショッピングセンターまで歩いていく。キックオフまでまだ3時間はあるというのに、すでにドームへ向かう人々とすれ違う。家族連れ、友達同士、年配の夫婦。誰もが少し楽しそうに見える。4歳くらいの男の子がチームTシャツを着てフラッグを持って小走りに駆け出したり、止まったり。良い面構えだ。なかなかに良いサポーターとして成長してくれることは間違いなさそう。見てる僕も思わず笑みがこぼれる。
まずショッピングセンターの本屋に向かう。今日のような日はスポーツコーナーの雑誌が乱雑に平積みされている。「おいおい立ち読みした雑誌はキチンと戻せよ」と呟く本屋のアルバイト経験がある40過ぎのおっさん。それが僕だ。スポーツ雑誌をパラパラと目を通し、興味も持った記事が載っている奴を購入。その足でスポーツショップへ。別段何を買うわけでもないが、トリニータグッズのコーナーやバスケのコーナーをぶらぶら。
スタバかシアトルズに入ってコーヒーを飲みながら雑誌に読む。ついでに喫煙。ショッピングセンターに目をやると、試合の日だけあってトリニータのユニを身に着けた人が多い。
そろそろドームに行こう。さっき通った道を再び戻る。さっきよりもっと多くの人々がドームに向かって歩いている。前を行く初老の夫がしきりに高松の位置取りについて講釈をたれている。初老の妻は聞いているのかいないのか空返事をしている風。選手のサインが沢山入ったユニを着ている女の子二人連れは何が面白いのかケタケタ笑いながら歩いている。ドームの前の長い階段をゆっくり上ると後ろから子供が抜いていく。流石に元気。2段階になった階段を上り詰めると我らがホーム、九州石油ドームだ。振り返ると眼下に僕の育った街が広がる。まだまだ緑の多い田舎町を吹きぬけた風がドームの高台に届く。そこはかとなく春の香りがする。
もうスタジアムからはDJの声やゴール裏の住人のコールが聞こえてくる。胸の高まりを感じながらシーズンパスを出しゲートをくぐる。なかなかこの電子タグを内蔵したシーズンパスは好評のようだ。
いつものA席アウェイ側に向かう。僕が一番乗りであれば後乗りの面子のために席を取らねばならないのだけど....姉夫婦が既に着席(笑)。ほんま好きやなぁ、何時からきてんの。
姉が双眼鏡でスタジアム内を探索している。何してんのと聞くと、姉の下の息子、つまり僕の甥っ子が今日はスタジアムでバイトとの事。オレンジのウィンドブレーカーを着た甥を発見!メインとトリサポゴール裏の間あたりを動物園の熊のようにウロウロしている。僕は自席を離れスタジアムのほぼ逆側へ急ぐ。そーっと後ろから近づき「こらっスタッフはしっかり仕事せんかい!」と大声をだす、びっくりして後ろを向く「なんか、おいちゃんかぁ。何?」僕の甥とは思えぬほどノリが悪い....まぁ今日は勘弁しとったる。しっかり仕事しろよ。
ピッチ内で選手の練習が始まる。ゴール裏からの選手コールに手を上げる選手、頭を下げる選手。自分がコールされていることを判っているのかと不安にさせる選手。選手はいったん引き上げると、九石ドームはターフキッズの出番。ターフキッズ練習後の芝補修を地元のサッカーチームの少年少女が実施するのだ。その後、ボールボーイの入場。大分の場合、鶴崎工業とか大分工業のサッカー部がボールボーイを行う。YMCAの曲にのって登場。今日は大分工業か、ちいとノリが悪いぞ。僕の見立てではいつも踊りに一捻り聞かせる鶴工が一番かな。大分工業もっと精進せぇ!。
サポータのチャントが響き選手入場。さぁキックオフ。
審判の長い笛が吹かれて、ゲーム終了。
勝っても負けてもまた普通の日常が戻ってくる。
姉夫婦と「帰り気をつけて」「んじゃまた」と声を交わして駐車場へ.....。
2万人に近い人が集いそしてまた離れていく。
大分を離れて20年を越す歳月が流れ再び大分に戻ってきた。
多くの事が変わっている。駅前の商店街が寂れ、僕が学生時代にアルバイトをしていた本屋はすでに倒産し無くなっている。大分の街中も少し寂れた。大分のような地方都市ではJRよりもマイカーで行く郊外型ショッピングセンターの方が客が集まっている。
僕のような歳になると懐かしさや安心感が先にたち「ノンビリしてて住みやすい」とも感じれるのだが、やはり若者はある程度田舎特有の閉塞感を感じているんじゃないだろうか。都会には全てが溢れている。選べる自由もある。その多くは大分という街が持っていないものなのだ。
大分にトリニータというプロのサッカーチームができた。これは本当に素晴らしい事なのだと思う。選手たちがどう感じているかは判らないけれど、僕たちサポーターはトリニータというチームを大分の、大分に住む我々を代表するものたちとして声をあげて応援する。そう大分の誇りとして我々に代わって闘ってくれるものが存在するという幸せを噛み締めなければいけない筈なのだ。
もっともっと我々はトリニータがある事に感謝しなければならない。